S.Saeki(id:S-Saeki) のオリジナルシナリオばなし

【その2 日常描写】

 S.Saeki です。前回の反応がどうも皆無なので、やっぱスベったかーと思わなくもないのですが「試合がコールドになるのはロッテ戦だけで十分よ……」と三笠氏が疲れたように呟いたような気がしなくもないので、とりあえずもうちょっと続けてみます。

 今回はついさっきプレイした『AngelicLullaby』について。

突如として現れた、断罪者と名乗る怪物。
強大な力を持つ断罪者に立ち向かうために、
遥か昔の時代に作られた、天使の力を持つ巨人が立ち上がる。
戦いの果てに少年が辿り着くのは希望の未来か、それとも絶望の未来か──


短編オリジナルオンリーシナリオです
(公式ページシナリオコーナーより紹介を抜粋)


 失ったものを取り返す物語、には様々なバリエーションがあります。記憶喪失モノや異世界召還モノなど、そして復讐劇もこの中の一つに数えられます。
 『AngelicLullaby』は一人暮らしをしていた主人公が、故郷と家族を奪った謎の敵に立ち向かってゆくという復讐の物語です。しかしそれは同時にヒロインを中心とした周囲の人々との触れ合いによって、「新しい故郷」とも言うべき今の日常を再構築してゆく過程でもあります。この作品は復讐劇が持つその二つの世界に、接点がほとんどありません。それぞれに登場する人物が定まっていて独立しているからです。
 最終話までプレイしましたが、戦闘面については割とおざなりに終わってしまっているものの、その代わり日常描写については見るべきところがあります。それは、この物語で多用されているいくつかの<繰り返し>です。
 それは人の来訪をインターフォンの効果音で示すという当たり前のものから、電話が多用されていることや、あるいは親しいクラスメートが揃ってゲーム好きであること、など。
 ワンパターンではあります。が、その「お約束」の中でセリフや展開に変化をつけて登場人物の個性を深めるのは、野球の継投から水戸黄門の印籠まで幅広く使われている基本的なことです。全七話という短い作品なので、的を絞った<繰り返し>に飽きなかったという理由もあるでしょう。
 これが良く表れているのが二つのゲームセンターのシーンです。一回目と二回目で比べてみると何故行ったのか、誰と行ったのか、何をしたのかという点において上手に区別をつけています。
 短編における的の絞り方、その積み重ね方を、割とすっきりとこのシナリオは教えてくれるものだと思います。


書いた人:S.Saekiid:S-Saeki)